グリーンレーザーポインタの製作

公開:2005/03/21
最終更新:2008/02/12

このページでは、取り扱いを誤ると目や皮膚などに重大な後遺症を残す危険なレベルのレーザーについて記述してありますが、その内容の正確性は保証しません。
このページを参考にすることで生じたいかなる損害に対して、筆者・著作者は一切の責任を負いません。

レーザー光線は取り扱いを間違えると非常に危険です。失明する恐れがあるので、レーザー光線を目に入れるようなことは絶対にしないでください。
レーザー光線を使った実験、研究、工作には常に失明などの大きなリスクが伴うことを自覚し、遊びには使わず悪用しないでください。

このページで紹介している全ての実験と工作は、専門的な技術と知識を有する技術者が行っています。
危険回避のため、一般の方の不用意な再現実験はお控えください。


目次

  1. 概要
  2. なぜ、グリーンレーザーか?
  3. 関係法令
  4. レーザーモジュールの仕様
  5. レーザーモジュールの特性
  6. レーザーポインタ用ハウジングの製作
  7. アルバム
  8. 関連リンク
  9. フィードバック
  10. 筆者紹介

概要

共立電子産業で販売しているグリーンレーザーモジュールを利用して、レーザーポインタを製作してみる。

なぜ、グリーンレーザーか?


光には赤や青のようにいろいろな波長があるというのは説明不要だろう。
人の目は、それらの光に対してすべて同じ感度を持っているわけではない。つまり、見やすい(認識しやすい)色、見えにくい色があり、目の光に対する感度を視感度という。
人の目は一般に555nmの波長の光が最も感じやすい。この555nmの波長を基準に、相対的に表された視感度を比視感度と言う。 図に比視感度曲線を示す。555nmの波長がもっとも視感度が高く、波長が長くあるいは短くなるにつれて視感度が低くなることが見て取れる。
プレゼンテーション用などで一般に広く普及している赤色レーザーポインタの波長は、大体650nmぐらいだ。それに対し、共立電子産業で売られているレーザーモジュールの波長は532nm。図に照らし合わせてみると、視感度の差は歴然だ。
この話は、「へー、見やすいんだ」で終わらせるべきことではない。
日本人のような黄色人種には、男性で約5パーセントほど赤緑色盲の方がいるといわれている。
5パーセント。20人に1人。学校なら、1クラスに一人以上いる計算だ。
そういう障害を持っている方にとっては赤色レーザーポインタなどは見づらく、また、そういう方は決して少ないわけではないということを認識しなければならない。
多くの人は会議やプレゼンテーションなどを経験する、あるいはしていると思うが、その席上には赤色レーザーポインタは使って欲しくないという方がいるかもしれない。
色という物でももっとバリアフリーであるために、レーザーポインタを使っている、あるいは使おうとしている方にグリーンレーザーポインタの選択を提案したい。

関係法令

取引の規制
レーザーポインターの製造・輸入・販売は
 消費生活用製品安全法
 改正消費生活用製品安全法施行令
により規制されています。(→概要)

安全対策について
 レーザー光線による障害の防止対策について

出力による分類
レーザー機器はその出力に応じて、JISによりクラス1,1M,2,2M,3R,3B,4に分類されている。
(2005年1月に従来のクラス1、2、3A、3B及び4の5クラスの分類から7クラスの分類へ改定された)
 レーザ製品の安全基準 (JIS C 6802)

レーザーモジュールの仕様

レーザーモジュールは共立電子産業で販売している物を使用する。
このモジュールは、半導体レーザーでNd:YVO4結晶(※1)を励起し波長1064nmのレーザー光を発振させ、その光を非線形光学結晶を通す事で532nmのレーザー光を得ている(※2)。
(※1)ネオジウム ドープ イットリウム四酸化バナジウムと読む(希土類金属とバナジウムの複合酸化物を希土類バナデート単結晶と呼ぶので、レーザー屋はNd:YVO4結晶を単に「わいぶいおー」や「バナデート」と呼ぶ)。他の一般的なモジュールでは、Nd:YAG(ネオジウムドープヤグ、又はエヌディーヤグと読む。YAGはイットリウム、アルミニウム、ガーネットの頭文字)を用いている場合もある。
(※2)第二次高調波を発生させている。Second-Harmonic Generation:SHG という。(→資料)

ちなみに、であるが、レーザーの電力-光変換効率はそれほど高くない。すなわち多くが熱となる。
このモジュールも例外ではなく、若干真鍮の部分が熱くなる。しかし、これをガンガン冷やそうなどと野暮なことは考えてはいけない。
理由は非線形光学結晶にある。この結晶は、確かに光を通せば波長が変わるのだが、光軸との間に最も効率よく光を変換できる「角度」がある。それを「位相整合角」と呼ぶが、詳しい説明は避ける。
実際にその角度にしてやるには、結晶の角度を物理的に変える(角度チューニング)か、結晶の温度を変えてやる(温度チューニング)必要があるのだ。
一般にレーザー製品は出荷時に通常使用で達する温度で最適化されているはずなので、この温度を保つような冷却・加熱は効果的だがそれ以外は逆効果なのだ。


モジュールの仕様(公表値)

DPSS(Diode Pumping Solid State) LASER
型番 IE-L532-3G-3-P1 (-)
波長 532nm
エネルギー 5mW未満(Class3A)
動作電圧 DC3V


共立から届いたモジュール(いわゆる新共立)。ダンボールから取り出したところ。
2つ同時に注文したら、モジュールは一つのプチプチに梱包されていた。説明書も一つ。
因みに、モジュール一つ6720円、モジュール2つを東京から通販した場合の送料はヤマト使用で840円(1つなら500円らしい)。
2つ買うなら、欲しい人集めてマトメ買いしたほうが送料的にはお徳かも。

モジュール外観
比較のために単三乾電池を示す。モジュールはもっとも太いところでφ12mm。単三乾電池は太さφ14mm、長さ50.5mm。

説明書
寸法などが書かれているが、なんとも頼りない。。。


レーザーモジュールの特性

このセクションでは、共立レーザーモジュール IE-L532-3G-3-P1 (-) の各種特性について試験を行う。
基本仕様は前述のとおりである。
モジュールにはバラつきや、アタリ・ハズレがあるので、ここで公表するデータは参考程度の意味しか持たないことをあらかじめ断っておく。
以下に試験装置概略と使用機器を示す。



使用機器
直流安定化電源 ELEKIT PU-2064
デジタルマルチメータ METEX M4660A
レーザーパワーメータ LP1-532(校正波長532nm)
レーザーモジュール IE-L532-3G-3-P1 (-)


【デフォルト出力の測定】
一切改造していないモジュールの出力を測定してみた。

測定データ(実測値)
印加電圧 安定化 DC 3.0 [V]
消費電流 215 [mA]
出力 6.74 [mW]

【電圧-電流特性】
印加電圧と消費電流の関係を調べてみた。
レーザーの立ち上がりは、1.9から2.0[V]の間で、2.0[V]のときのレーザーパワーは0.15[mW]、消費電流は103[mA]だった(ダイオード単体ではなくドライブ回路まで含めた消費電流であることに注意)。
3.0[V]を印加した時、消費電流は215[mA]、出力は6.74[mW]にもなった。電圧を上げていけばまだ出力が上がる気配を見せていたが、危険なのでここまでのデータしか取らなかった。
レーザーポインタとして使うなら、パワーを落とす工夫が必要である。
newkyoritu

レーザーポインター用ハウジングの製作

このモジュールをレーザーポインターとして使うために、モジュールと電池を収めるためのハウジングを製作する。

モジュールを採寸していたところ、モジュール先端部のネジが特殊なものであることが判明したので、そのことについて触れておく。
ピッチゲージで測定したところ、モジュール先端部のネジのピッチは0.5mmであった。
しかし、ネジ部外径は7.4mm程度であり、このピッチ及び外径に適合する規格ネジは(インチネジ、ミリネジともに)存在しない。
その昔、JISにISOが導入される前、M8のピッチ0.5というネジが存在したのは事実だが、現在はJISから消されているし、ISOにも存在しない。当然ながら、外径が違いすぎるので、古い規格のタップでネジを切りそれにモジュールをねじ込むことはできない。
このモジュールのネジ部に適合する雌ネジが欲しいならば、

  1. 専用のタップを作る
  2. 旋盤で雌ネジを切る
  3. ネジ部にスッポリかぶさるスリーブを作り、その外側に一般的なネジを切る(先に外側へダイス等でネジを切ってから、モジュールにかぶせる)。そして、一般的なタップで雌ネジを切る。

という手法が考えられる。
今回は2番の手法を採用し、旋盤で規格外のネジを切ることにする。
7mmくらいの下穴に7.5mmくらいの雌ネジを旋盤で切る作業は、物が小さいだけにちょっと厄介な作業だ。
でも、そこは我等がPON'sFactory.。コネによって町工場に依頼した(自分じゃやらないのね・・・)。
依頼したのは、人工衛星やF1のエンジン、すばる望遠鏡の部品製作なども手がける東京都内某所の某工場。
工場だけあって、きれいに早く正確に仕上げてもらった。

このサイトは『Factory』を謳っているので、さすがにすべての部品製作を依頼しその組立て記録をコンテンツとして公開するなんて事はしたくない。
そこで、ピッチ0.5mmの雌ネジ切り以外の工程はすべて自分で行うことにした。
今回製作するレーザーポインタは総部品点数5点。そのうち4点を自主製作する。

自主製作する部品は

  1. 筒(本体)
  2. 前キャップ
  3. 後キャップ
  4. ボタン

の4点だ。細かい写真は無いが、代わりに図面を以下に公開するので大体の形と大きさを掴んでもらいたい。
図面
図面では、ナットのねじ寸法を『M10×1.25』としていますが、これは間違いです。
規格外のねじなので、『下穴7.0mm , 谷の径7.5mm , ピッチ0.5mm』として読んでください。


筒の材料は、外形20mm,肉厚2.5mmのアルミパイプとした。
ただし、このサイズは規格外なのでホームセンターなどでの入手は困難だ。このサイズを扱っているお店にリンクを貼っておいたので、参考にしてもらいたい。
図面では材質などの細かい指定がされているが、電気を通し、軽く、内径が14~15mm(単三電池の外径が14mm)であること重要なので、特に「この材料でなければダメ」ということは無い。

アルバム





関連リンク

共立電子産業株式会社 さま
  レーザーモジュールの入手先。モジュールは、わざわざ大阪の店舗に足を運ば無くても 共立エレショップ を利用する事で入手可能。

志摩鋼業 さま
  非鉄金属材料のWEBショップ。特殊な金属でも手に入る。また、少量取引にも対応してもらえる。

材料屋.com さま
  各種材料のWEBショップ。規格外寸法材料、非鉄金属材料、先端材料、プラスチック、特殊合金などを取り扱っている。

AHO's Handmade Lasers さま
  アマチュアレーザー研究家。

ポッカーの実験室 さま
  激しい化学実験を扱っているサイト。いろんな意味で、「危険なかほり」の漂うサイトである・・・。

レーザーが好き! 11mW
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筆者紹介

  1. 機械工学(高エネルギー加工)専攻
      エキシマレーザーでのレーザーアプリケーションについて研究。
  2. フェムト秒パルスレーザー、緑・紫外・深紫外パルスレーザー(SHG,THG,FTHG)発振器の開発に従事。
  3. 電子ビーム装置の製造に従事。